実践:購買までの導線を設計する「事例2:クラウド会計ソフト②」
前回の記事では「クラウド会計ソフト(以下、会計ソフト)」を例に顧客像の設定とカスタマージャーニーの各フェーズにおける顧客の行動までを考えてみました。本当は1つの記事にしたかったのですが、あまりに膨大になったため、2つの記事に分けました。
今回は前回の内容から、各フェーズにおける施策例を検討してみます。
前回の振り返り
ここで簡単に前回記事の内容を振り返ります。
あなたの製品
あなたの製品は個人事業主向けのクラウド会計ソフトです。競合もたくさんいます。
さらに個人事業では欠かせないとは言え、自分で表計算ソフトで管理する、税理士さんにまるっとお願いする、等の代替方法もあります。
顧客像
顧客像は以下の通りです。

30代、個人事業主の開業前後の人がメインの顧客層です。
ITリテラシーも高めでSNSやリアルの交流会から積極的に情報収集をしています。
カスタマージャーニー(各フェーズでの「顧客の感情・考え」と「行動」)
考えたカスタマージャーニーは以下の通りです。

これらの各詳細を把握したい方は前回記事もご参照ください。
各フェーズにおける施策アイデア
ここからはこれまで想定した顧客像とカスタマージャーニーから、各フェーズでの顧客の考え・行動の詳細を洗い出し、それに合う施策を考えていきましょう。
1. 情報収集段階(開業前)
ある人が「個人事業を開業したい。まず何をすればいいのか?」という右も左も分からない段階です。また個人事業主になった後の稼ぎ方、なんていうテーマもかなり興味がある状態ですね。
これに関してこの顧客はブラウザ検索やYouTube、生成AIとの壁打ちなどをしたり、知り合いに聞いたりして情報を収集しています。
まだ、会計ソフトが必要かどうか(というか会計ソフトの存在も)よく分かっていない段階です。
考えられる施策
こうなるとベンダーがやるべきことは、ソフトの宣伝の前に、最初の接点となる顧客の「開業の悩み」に対して寄り添い、情報を提供することだと考えられます。
- 自社ホームページやYouTube、SNSでの情報提供(開業についての情報・お金の管理方法・売上の立て方等)
- 個人事業主のインフルエンサー等を通じた情報発信
有益な開業ノウハウなどを発信・提供することで、「役立つ情報をくれる会社(サイト)だ」という好印象を持ってもらえますし、他の情報を探すときも参考にするようになります。
2. Attention(認知)
顧客がある程度「開業」について知っていくと「経費を付けた方がいいらしい」「確定申告をしなければいけないらしい」という情報を得ていきます。そしてそのような情報を提供しているページでは「会計ソフト」という内容も出現してくるでしょう。
これは知り合いに聞いても同じです。「会計ソフトがあるといいよ」という話を聞くことになります。
そうなると顧客は「会計ソフトというものがあった方がいいらしい 」 と知識を付けます。そして「それぞれの会社の製品をちょっと調べてみるか」 と、各社サイトを確認したり、ネットでの口コミを探したり、知り合いに聞いたりします。
さらにはたと気づくのです。「売上と経費ってどういうふうに考えて記録していけばいいのだろう」と。
私も個人事業を開業したころ、SNSでこんな投稿をしていました。
たくさんの返信が付いていますね。
これがSNS効果で個人事業主の先輩方から色々とアドバイスをいただけています。こちらについては「5. Share(共有)・購買後」で話しますが既存ユーザーへの対処も、新しい顧客を獲得することに重要なポイントと言えるでしょう。
考えられる施策
この段階でも必要な施策は「1. 情報収集段階」とさほど差はないかもしれません。ひたすらに個人事業に纏わる様々な発信をしてきましょう。
開業前後の不安を解決できるような情報、そしてその中にはお金の管理方法が含まれているでしょう。
私も創業の相談で一番多いものは「経費ってどうすればいいんですか?」のような質問です。なんとなくみなさん見聞きして「経費」をつけなければいけないこと、また節税についてもなんとなくした方がお得だ、ということをご存知です。
ただそれをどういう場面でどうしたらいいかが分からない、という感覚なんだな、という印象を受けています。
3. Interest(興味)・Search(検索)
ここまで来ると「どうも売上や経費の管理には会計ソフトはどうも必要そうなものだ」という1つの結論に顧客はたどり着きます。
ここから顧客はいよいよ具体的な検討に入ります。 具体的に会計ソフトについて調べ始めるのがこの段階だと言えるでしょう。
考えられる施策
これらに対して、ベンダーが取れる施策は以下が挙げられます。
- 自社製品の情報(機能、特徴、価格等)
- 各社の比較表の提示
- ユーザーの声・体験談の掲載
ここで顧客は会計ソフトについて調べ始めます。
自社サイトやコラムで情報を発信するとともに、「自社製品を使うと(他と比べて)どういいのか」という情報も必要です。
さらに個人事業主(同業者)の体験談を載せることで、「自分にはこれが合っている」という顧客の不安も軽減されます。
4. Action(購買)一段階目
顧客は調べていくに従って「AとBがどうもよく使われているようだ。知り合いもどちらかを使ってる人が多いみたい。どちらが使いやすいのか…」とだんだん思うようになります。そうすると使いやすさに関しての比較記事を探したり、試しで実際のソフト触ることはできないかと調べます。
こう言った「使ってみたいという欲望」「使いづらいかもしれないという不安」を解決できる施策を準備しましょう。
考えられる施策
これらに対して、ベンダーが取れる施策は以下が挙げられます。
- お試し期間の設定
- 経費項目や記録の付け方の解説ページ
- お試し期間後の面談やその他個別のフォロー
無料のお試し期間を設定し、実際に触ってもらうことで「これなら自分でもできそう」という安心感を与えます。また、分からない部分を手厚く個別フォローする体制の導入は欠かせないでしょう。
5. Action(購買) 二段階目
お試し期間を経て顧客は「AとBを両方試したけれど、Aの方が良さげだった。Aを買おう」と決心します。そして購入の手続きに入ります。
この時にもスムーズに購入できるように準備をしておいてください。
考えられる施策
これらに対して、ベンダーが取れる施策は以下が挙げられます。
- 複数の料金プランの準備
- オンラインでのクレジットカード決済の対応
もう十分に製品の良さは伝わっているので、ここで大量の離脱は考えにくいですがいくつか顧客が購入ボタンを押すまでに準備できることはあります。
まず1つは料金プランです。年間契約なのか月ごとなのか、途中で変更できるのか。一気に年間契約だと不安という方もたくさんいらっしゃいます。月ごとのプランを準備し、途中で少し割安な年間プランへの移行ができるようになっていると、決心がつきやすいかもしれません。
また、WEBサービスなのにお金は銀行振込で、というのはあまりにも「不便」を感じませんか?多くのWEBサービスが取り入れているようにクレジットカード決済は対応しておいた方がよさそうでしょう。
6. Share(拡散)~購買後
顧客は購入後、自分の経理業務を会計ソフト上で行います。
そして使っていくうちに、「この会計ソフト、すごく使いやすい!」と人に体験を教えたり、逆に「ここが不満。この会計処理が分からない…」と検索したり、ネガティブな感想をSNSで呟いたりします。
このような状況でできる施策を考えてみましょう。
考えられる施策
これらに対して、ベンダーが取れる施策は以下が挙げられます。
- ユーザー専用の問い合わせフォームやチャットボットの設置
- ユーザーへのヒアリング・アンケート
- アンバサダー・紹介割等の導入、クーポンコードの配布
購入後の「分からない」をすぐ解決できるチャットボットや質問箱の設置は顧客満足の向上につながります。 また製品を気に入ったユーザーが他の人に勧めたくなるようなアンバサダーや紹介割制度も、さらなる拡散を促せます。これには新規顧客獲得やリピーター獲得の効果もあります。
ここまでの話をまとめると以下のようになります。
カスタマージャーニーの考え方、そしてその行動に合わせた施策を考えていく工程を少しでも体感していただけましたら幸いです。
顧客の立場と目線になって、施策の打ち手を考える
いかがでしたでしょうか?
前回のイメージしやすかったスイーツ店とは違う、形のないクラウドサービスを取り扱ってみました。
「難しそう」「全部同じに見える」といった顧客特有の不安や悩みに、彼らがどのタイミングでどんなことをしたくなるか、を考えることで様々な施策が考えられます。 WEB上の情報提供から始まり、お試しでの安心感、オンラインでの手厚いサポートなど基本的な部分でも、様々な工夫が可能です。
対面での接客がないWEB中心の導線だからこそ、顧客の「本音」を先回りして解消してあげる仕組み作りがいかに重要になってくるかということを、見ていただけたかと思います。
顧客の目線、そしてそのときに顧客の持つ感情・考えになりきることで、必要な施策が見えやすくなると思います。
ぜひ、ご自身のビジネスの導線設計にも役立ててください。
私どもでは貴社のマーケティング戦略立案とその運営体制の構築を支援しております。
まずはお気軽にお問合せください。

